フェルマーの最終定理のよくある初等的証明8

フェルマーの最終定理のよくある初等的証明をご紹介します。

 X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素な自然数、nが奇素数として

 矛盾を導きます。

 流れのポイントは、次の[1][2][3][4][5]です。

[1] E=X+Y-Z と  X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと

 ⇒ A+B=C,  n|E,  n*A|E^n,  n*B|E^n,  n*C|E^nになります。

 


[2] E'=(-X)+Z-Y と  (-X)=A'+E', Y=B'+E', Z=C'+E' とおくと

 ⇒ A'+C'=B',  n|E',  n*A'|E'^n,  n*B'|E'^n,  n*C'|E'^nになります。

 


[3] E"=(-Y)+Z-X と  X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" とおくと
 
 ⇒ B"+C"=A",  n|E",  n*A"|E"^n,  n*B"|E"^n,  n*C"|E"^nになります。

 

 

[4]E≠0とすると、A=a^n, B=b^n, C=c^nと A+B=C から  

⇒ a^n+b^n=c^n になり、 c<Zより、自然数Zが最小であれば矛盾します。

 

 

[5] E=0 とすると、X+Y=Z から

       

 ⇒ 自然数 X,Y,Z で、X^n + Y^n < (X+Y)^n より、

     X^n + Y^n = Z^n であることに矛盾します。

 

 

次に、[1][2][3][4][5]を順にご説明します。


[1] E=X+Y-Z と  X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと

 ⇒ A+B=C,  n|E,  n*A|E^n,  n*B|E^n,  n*C|E^nになります。
 
[ご説明]


E=X+Y-Zとして、 X=A+E、Y=B+E、Z=C+Eとおくと、

A+B=C になります。

なぜなら、
E-Y=X-Z=-B
E-X=Y-Z=-A
E-Z=(X-Z)+(Y-Z)=-C
だから、A+B=C になります。

X^n + Y^n = Z^n に 

X=A+E、Y=B+E、Z=C+Eを代入すると、

 

(A+E)^n + (B+E)^n = (C+E)^n

A^n+Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*E^(n-k)+E^n+
B^n+Σ[k=1,n-1]nCk*B^k*E^(n-k)+E^n=
C^n+Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*E^(n-k)+E^n

E^n=

{C^n-A^n-B^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{C^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


 C=A+Bを代入すると、

E^n=

{(A+B)^n-A^n-B^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{(A+B)^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


E^n=

Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*B^(n-k)+

Σ[k=1,n-1]nCk*{(A+B)^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


右辺の各項は、nCkを含み、n|nCk だから、 n|右辺 

 

だから n|左辺 より、 n|E^n から n|E

 

(1) Aについて

 

右辺の各項は、nCk*Aを含み、n|nCkだからn*A|E^n

nは奇素数なので、n|E, rad(A)|E


右辺の各項と左辺の各項を、n*Aで割ると、

E^n/(n*A)=
{(E^n)/n}/A=

B^(n-1)+{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}+
Σ[k=2,n-1]B*(nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A^(m-1)*B^(k-m-1)}*E^(n-k)

もし、

{(E^n)/n}/AにAの素因数が残っていれば、

rad(A)|Eで、
A|{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}だから、

B^(n-1)もAの素因数を持ちます。
AとBは互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E^n)/n}/AにAの素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E^n)/n}は、ちょうどAで割り切れることになります。

 

Aは、(E^n/n)をちょうど割り切るので、
Aの素因数pの冪は、p^m | E かつ p^(m+1) ∤ Eのとき
 
p≠nで、p^mn の形をしています。


また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪は、p^(mn-1)の形をしています。

 

 

(2) Bについて

 

Aと同様にして、

{(E^n)/n}は、ちょうどBで割り切れることになります。

 

Bは、(E^n/n)をちょうど割り切るので、
Bの素因数pの冪は、p^m | E かつ p^(m+1) ∤ Eのとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。


また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪は、p^(mn-1)の形をしています。

 


(3) Cについて

 

以下の通り、{(E^n)/n}は、ちょうどCで割り切れることになります。


Z= C+E, X= A+E, Y= B+E だから

Z^n = X^n + Y^n 
に代入すると、

(C+E)^n = (A+E)^n + (B+E)^nなので、

(C+E)^n - (B+E)^n - (A+E)^n = 0

B = C-A を代入して

(C+E)^n - (C-A +E)^n - (A+E)^n = 0
(C+E)^n + {(-C+A) -E}^n + {(-A)-E}^n = 0


C^n + Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*E^(n-k) +E^n +
(-C+A)^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-C+A)^k*(-E)^(n-k) +(-E)^n +
(-A)^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-A)^k*(-E)^(n-k) +(-E)^n = 0


-(-E)^n=
{C^n +(-C+A)^n +(-A)^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ C^k*E^(n-k) +(-C+A)^k*(-E)^(n-k) +(-A)^k*(-E)^(n-k) }


E^n=
{C^n -(C-A)^n -A^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ C^k*E^(n-k) -(C-A)^k*E^(n-k) -A^k*E^(n-k) } =

-Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*(-A)^(n-k) +
Σ[k=1,n-1]nCk*{ C^k -(C-A)^k -A^k }*E^(n-k)


E^n=
-Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*(-A)^(n-k) +
-Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*C^m*(-A)^(k-m)}*E^(n-k)

右辺の各項は、nCk*Cを含み、n|nCkだからn*C|E^n

nは奇素数なので、n|E, rad(C)|E

右辺の各項と左辺の各項を、n*Cで割ると、

(E^n)/(n*C)=
{(E^n)/n}/C=

-(-A)^(n-1)-{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*C^(k-1)*(-A)^(n-k)}+
-Σ[k=2,n-1](nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*C^(m-1)*(-A)^(k-m)}*E^(n-k)

もし、

{(E^n)/n}/C に C の素因数が残っていれば、

rad(C)|E で、
C |{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*C^(k-1)*(-A)^(n-k)}だから、

(-A)^(n-1)も C の素因数を持ちます。
A と C は互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E^n)/n}/C に C の素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E^n)/n}は、ちょうど C で割り切れることになります。

 

Cは、(E^n/n)をちょうど割り切るので、
Cの素因数pの冪は、p^m | E かつ p^(m+1) ∤ Eのとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。


また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪は、p^(mn-1)の形をしています。

 

 

 

[2] E'=(-X)+Z-Y と  (-X)=A'+E', Y=B'+E', Z=C'+E' とおくと

 ⇒ A'+C'=B',  n|E',  n*A'|E'^n,  n*B'|E'^n,  n*C'|E'^nになります。

 

[ご説明]

 

E'=(-X)+Z-Y で、(-X)=A'+E'、Y=B'+E'、Z=C'+E' とおくと、

 

A'+C'=B'  になります。

 

-(X^n) + Z^n = Y^n に 

(-X)=A'+E'、Y=B'+E'、Z=C'+E' を代入すると、

E'=-Eより、-A=-(X-E)=(-X)-E'=A'


(A'+E')^n + (C'+E')^n = (B'+E')^nなので、

A'^n +Σ[k=1,n-1]nCk*A'^k*E'^(n-k) +E'^n+
C'^n +Σ[k=1,n-1]nCk*C'^k*E'^(n-k) +E'^n=
B'^n +Σ[k=1,n-1]nCk*B'^k*E'^(n-k) +E'^n


C' = B'-A' を代入して

(B'+E')^n - (B'-A' +E')^n - (A'+E')^n = 0
(B'+E)^n + {(-B'+A') -E'}^n + {(-A')-E'}^n = 0


B'^n + Σ[k=1,n-1]nCk*B'^k*E'^(n-k) +E'^n +
(-B'+A')^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-B'+A')^k*(-E')^(n-k) +(-E')^n +
(-A')^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-A')^k*(-E')^(n-k) +(-E')^n = 0


-(-E')^n=
{B'^n +(-B'+A')^n +(-A')^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ B'^k*E'^(n-k) +(-B'+A')^k*(-E')^(n-k) +

(-A')^k*(-E')^(n-k) }


E'^n=
{B'^n -(B'-A')^n -A'^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ B'^k*E'^(n-k) -(B'-A')^k*E'^(n-k) -A'^k*E'^(n-k) } =

-Σ[k=1,n-1]nCk*B'^k*(-A')^(n-k) +
Σ[k=1,n-1]nCk*{ B'^k -(B'-A')^k -A'^k }*E'^(n-k)

 

(1) A' について

 

E'=-E, -A=-(X-E)=(-X)-E'=A' より、

[1]の(1) A と同じ素因数を持ちます。

 

(2) B'について


E'^n=
-Σ[k=1,n-1]nCk*B'^k*(-A')^(n-k) +
-Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*B'^m*(-A')^(k-m)}*E'^(n-k)

 

右辺の各項は、nCk*B'を含み、n|nCkだからn*B'|E'^n

nは奇素数なので、n|E', rad(B')|E'


右辺の各項と左辺の各項を、n*B'で割ると、

(E’^n)/(n*B')=
{(E’^n)/n}/B'=

-(-A')^(n-1)-{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*B'^(k-1)*(-A')^(n-k)}+
-Σ[k=2,n-1](nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*B'^(m-1)*(-A')^(k-m)}*E'^(n-k)

もし、

{(E'^n)/n}/B' に B' の素因数が残っていれば、

rad(B')|E' で、
B' |{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*B'^(k-1)*(-A')^(n-k)}だから、

(-A')^(n-1)も B' の素因数を持ちます。
A' と B' は互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E'^n)/n}/B' に B' の素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E'^n)/n}は、ちょうど B' で割り切れることになります。

 

B'は、(E'^n/n)をちょうど割り切るので、
B'の素因数pの冪は、p^m | E' かつ p^(m+1) ∤ E'のとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。


また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪は、p^(mn-1)の形をしています。

 

---------------------------->p≠nのご説明

 

もし、Bに素因数p=nがあれば、

E'=-E, B'- B=(Y-E')-(Y-E)=2*Eより、

B'-B =2*E

B'-B =2*Eについて、rad(B)⊆rad(B')より

左辺Bの素因数p=nは、左辺B'の素因数p=nでもあり、
ともに、左辺の素因数p=nの冪は、p^(mn-1)の形をしています。

ところが、右辺の素因数p=nの冪は、p^mです。

n≧3なので、
p^(mn-1)>p^m
だから、

左辺のp=nの冪と右辺のp=nの冪が異なり矛盾します。

 

したがって、Bは素因数p=nを持たないので、

Bの素因数pの冪は p^mn の形をしています。

 

つまり、B=∏ p^mn=(∏ p^m)^n
ここで、(∏ p^m)=bとおくと、B=b^nとなります。

 


(3) C' について

 

E'^n=

{B'^n -A'^n -C'^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{B'^k -A'^k -C'^k}*E'^(n-k)


A'+C'=B' を代入すると、

E'^n=

{(A'+C')^n -A'^n -C'^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{(A'+C')^k -A'^k -C'^k}*E'^(n-k)

 

右辺の各項は、nCkを含み、n|nCk だから、 n|右辺 

 

だから n|左辺 より、 n|E'^n から n|E'

 

右辺の各項と左辺の各項を、n*C' で割ると、

E'^n/(n*C')=
{(E'^n)/n}/C'=

A'^(n-1)+{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*C'^(k-1)*A'^(n-k)}+
Σ[k=2,n-1](nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*C'^(m-1)*A'^(k-m)}*E'^(n-k)

もし、

{(E'^n)/n}/C'にC'の素因数が残っていれば、

rad(C')|E'で、
C'|{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*C'^(k-1)*A'^(n-k)}だから、

A'^(n-1)もC'の素因数を持ちます。
C'とA'は互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E'^n)/n}/C'にC'の素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E'^n)/n}は、ちょうどC'で割り切れることになります。

 

C'は、(E'^n/n)をちょうど割り切るので、
C'の素因数pの冪は、p^m | E' かつ p^(m+1) ∤ E'のとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。


また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪は、p^(mn-1)の形をしています。

 

---------------------------->p≠nのご説明

 

もし、Cに素因数p=nがあれば、

E'=-E, C'- C=(Z-E')-(Z-E)=2*Eより、

C'-C =2*E

C'-C =2*Eについて、rad(C)⊆rad(C')より

左辺Cの素因数p=nは、左辺C'の素因数p=nでもあり、
ともに、左辺の素因数p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。

ところが、右辺の素因数p=nの冪は、p^mです。

n≧3なので、
p^(mn-1)>p^m
だから、

左辺のp=nの冪と右辺のp=nの冪が異なり矛盾します。

 

したがって、Cは素因数p=nを持たないので、

Cの素因数pの冪は p^mn の形をしています。

 

つまり、C=∏ p^mn=(∏ p^m)^n
ここで、(∏ p^m)=cとおくと、C=c^nとなります。

 

 


[3] E"=(-Y)+Z-X と  X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" とおくと
 
 ⇒ B"+C"=A",  n|E",  n*A"|E"^n,  n*B"|E"^n,  n*C"|E"^nになります。

 

[ご説明]

 

E"=(-Y)+Z-X で、X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" とおくと

 

B"+C"=A"になります。

 

-(Y^n) + Z^n = X^n に 

X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" を代入すると、

E'=-Eより、-B=-(Y-E)=(-Y)-E"=B"


(B"+E")^n + (C"+E")^n = (A"+E")^n なので

B"^n+Σ[k=1,n-1]nCk*B"^k*E"^(n-k)+E"^n+
C"^n+Σ[k=1,n-1]nCk*C"^k*E"^(n-k)+E"^n=
A"^n+Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*E"^(n-k)+E"^n

(1) A" について

 

E"^n=

{A"^n-B"^n-C"^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{A"^k-B"^k-C"^k}*E"^(n-k)

 

C" = A"-B" を代入して

(A"+E")^n - (A"-B"+E")^n - (B"+E")^n = 0
(A"+E")^n - {(A"-B")+E"}^n + {(-B")-E"}^n = 0


A"^n + Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*E"^(n-k) +E"^n +
(A"-B")^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(A"-B")^k*E"^(n-k) +E"^n +
(-B")^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-B")^k*(-E")^(n-k) +(-E")^n = 0


-(-E")^n=
{A"^n - (A"-B")^n + (-B")^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ A"^k*E"^(n-k) - (A"-B")^k*E"^(n-k) +

(-B")^k*(-E")^(n-k) }


E"^n=
{A"^n - (A"-B")^n - B"^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ A"^k*E"^(n-k) - (A"-B")^k*E"^(n-k) -

B"^k*E"^(n-k) } =

-Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*(-B")^(n-k) +
Σ[k=1,n-1]nCk*{ A"^k -(A"-B")^k -B"^k }*E"^(n-k)


E"^n=
-Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*(-B")^(n-k) +
-Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*A"^m*(-B")^(k-m)}*E"^(n-k)

右辺の各項は、nCk*A"を含み、n|nCkだからn*A"|E"^n

nは奇素数なので、n|E", rad(A")|E"


右辺の各項と左辺の各項を、n*A"で割ると、

(E"^n)/(n*A")=
{(E"^n)/n}/A"=

-(-B")^(n-1)-{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A"^(k-1)*(-B")^(n-k)}+
-Σ[k=2,n-1](nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A"^(m-1)*(-B")^(k-m)}*E"^(n-k)


もし、

{(E"^n)/n}/A" に A" の素因数が残っていれば、

rad(A")|E" で、
A" |{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A"^(k-1)*(-B")^(n-k)}だから、

(-B")^(n-1)も A" の素因数を持ちます。
B" と A" は互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E"^n)/n}/A" に A" の素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E"^n)/n}は、ちょうど A" で割り切れることになります。

 

A"は、(E"^n/n)をちょうど割り切るので、
A"の素因数pの冪は、p^m | E" かつ p^(m+1) ∤ E"のとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。


また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。

 

---------------------------->p≠nのご説明

 

もし、Aに素因数p=nがあれば、

E"=-E, A"- A=(X-E")-(X-E)=2*Eより、

A"-A =2*E

A"-A =2*Eについて、rad(A)⊆rad(A")より

左辺Aの素因数p=nは、左辺A"の素因数p=nでもあり、
ともに、左辺の素因数p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。

ところが、右辺の素因数p=nの冪は、p^mです。

n≧3なので、
p^(mn-1)>p^m
だから、

左辺のp=nの冪と右辺のp=nの冪が異なり矛盾します。

 

したがって、Aは素因数p=nを持たないので、

Aの素因数pの冪は p^mn の形をしています。

 

つまり、A=∏ p^mn=(∏ p^m)^n
ここで、(∏ p^m)=aとおくと、A=a^nとなります。

 

 


(2) B" について

 

E"=-E, -B=-(Y-E)=(-Y)-E"=B" より、

[1]の(2) B と同じ素因数を持ちます。

 

 

(3) C" について

 

E"=E'=-E, C'=Z-E'=Z-E"=C" より、

[2]の(3) C' と同じ素因数を持ちます。

 

 

 

[4] E≠0とすると、A=a^n, B=b^n, C=c^nと A+B=C から  

⇒ a^n+b^n=c^n になり、 c<Zより、自然数Zが最小であれば矛盾します。

 

[ご説明]

 

上記[3]の(1)から、A=a^n

上記[2]の(2)から、B=b^n

上記[2]の(3)から、C=c^n

だだし、a,b,cは自然数

 

A+B=Cに代入すると、a^n+b^n=c^n

 

E≠0のとき、a≦A<X, b≦B<Y, c<C<Z

ただし、等号はA=1またはB=1のとき

 

c<Zより、自然数Zが最小であれば矛盾します。

 

 

 

[5] E=0 とすると、X+Y=Z から

       

 ⇒ 自然数 X,Y,Z で、X^n + Y^n < (X+Y)^n より、

     X^n + Y^n = Z^n であることに矛盾します。

 

[ご説明] 


E=0のときは、
 
E= X+Y-Z= 0 だから X+Y=Z
(X+Y)^n = Z^nより

X^n + Y^n +{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)} = Z^n

X^n + Y^n = Z^nで、X,Yは自然数なので、 

{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)}=0となり、矛盾します。

 

なので、[4]と[5]から、 

 

X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素な自然数で、

nが奇素数自然数はありません。

なお、n=4のときの証明は既知とします。