フェルマーの最終定理のよくある簡易的証明10

フェルマーの最終定理のよくある簡易的証明のポイントをご紹介します。

 X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素な自然数、nが奇素数として 

矛盾を導きます。


 流れのポイントは、次の[1][2][3]です。


[1] E=X+Y-Z と  X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと

 ⇒ A+B=C, n|E,  n*A|E^n
 
[2] E"=(-Y)+Z-X と  X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" とおくと
 
 ⇒ B"+C"=A",  n|E",  n*A"|E"^n

[3] E"=-E, A"- A=2*E, rad(A) | rad(E), rad(A") | rad(E), 

  A|(E^n)/n, A"|(E^n)/n から

 ⇒ rad(A) | rad(A"), n|E, A"=A+2*E,

  AとA"の素因数pの冪は、p^mnまたはp^(mn-1)の形で矛盾


 次に、[1][2][3]の順にご説明します。


[1] E=X+Y-Z と  X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと

 ⇒ A+B=C, n|E,  n*A|E^n のご説明


E=X+Y-Zとして、 X=A+E、Y=B+E、Z=C+Eと置くと、 A+B=Cになります。

なぜなら、
E-Y=X-Z=-B
E-X=Y-Z=-A
E-Z=(X-Z)+(Y-Z)=-C
だから、A+B=Cになります。

AとBのどちらかは、1ではないので、A≠1とする

なぜなら、A=B=1とすると、X=Yになるから。

(A+E)^n + (B+E)^n = (C+E)^nなので、

A^n+Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*E^(n-k)+E^n+
B^n+Σ[k=1,n-1]nCk*B^k*E^(n-k)+E^n=
C^n+Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*E^(n-k)+E^n

E^n=

{C^n-A^n-B^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{C^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


 C=A+Bを代入すると、

E^n=

{(A+B)^n-A^n-B^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{(A+B)^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


E^n=

Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*B^(n-k)+

Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*A^m*B^(k-m)}*E^(n-k)


右辺の各項は、nCk*Aを含み、n|nCkだからn*A|E^n

nは3以上の素数なので、n|E, rad(A)|E


右辺の各項と左辺の各項を、n*Aで割ると、

E^n/(n*A)=
{(E^n)/n}/A=

B^(n-1)+{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}+
Σ[k=2,n-1]B*(nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A^(m-1)*B^(k-m-1)}*E^(n-k)

もし、

{(E^n)/n}/AにAの素因数が残っていれば、

rad(A)|Eで、
A|{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}だから、

B^(n-1)もAの素因数を持ちます。
AとBは互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E^n)/n}/AにAの素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E^n)/n}は、ちょうどAで割り切れることになります。

 

Aは、(E^n/n)をちょうど割り切るので、
Aの素因数pの冪は、p^m | E かつ p^(m+1) ∤ Eのとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。

また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。




[2] E"=(-Y)+Z-X と  X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" とおくと
 
 ⇒ B"+C"=A",  n|E",  n*A"|E"^n のご説明

 

 

E"=(-Y)+Z-X で、X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" とおくと

 

B"+C"=A"になります。

 

-(Y^n) + Z^n = X^n に 

X=A"+E", (-Y)=B"+E", Z=C"+E" を代入すると、

E'=-Eより、-B=-(Y-E)=(-Y)-E"=B"


(B"+E")^n + (C"+E")^n = (A"+E")^n なので

B"^n+Σ[k=1,n-1]nCk*B"^k*E"^(n-k)+E"^n+
C"^n+Σ[k=1,n-1]nCk*C"^k*E"^(n-k)+E"^n=
A"^n+Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*E"^(n-k)+E"^n

A" について

 

E"^n=

{A"^n-B"^n-C"^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{A"^k-B"^k-C"^k}*E"^(n-k)

 

C" = A"-B" を代入して

(A"+E")^n - (A"-B"+E")^n - (B"+E")^n = 0
(A"+E")^n - {(A"-B")+E"}^n + {(-B")-E"}^n = 0


A"^n + Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*E"^(n-k) +E"^n +
(A"-B")^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(A"-B")^k*E"^(n-k) +E"^n +
(-B")^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(-B")^k*(-E")^(n-k) +(-E")^n = 0


-(-E")^n=
{A"^n - (A"-B")^n + (-B")^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ A"^k*E"^(n-k) - (A"-B")^k*E"^(n-k) +

(-B")^k*(-E")^(n-k) }


E"^n=
{A"^n - (A"-B")^n - B"^n}+
Σ[k=1,n-1]nCk*{ A"^k*E"^(n-k) - (A"-B")^k*E"^(n-k) -

B"^k*E"^(n-k) } =

-Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*(-B")^(n-k) +
Σ[k=1,n-1]nCk*{ A"^k -(A"-B")^k -B"^k }*E"^(n-k)


E"^n=
-Σ[k=1,n-1]nCk*A"^k*(-B")^(n-k) +
-Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*A"^m*(-B")^(k-m)}*E"^(n-k)

右辺の各項は、nCk*A"を含み、n|nCkだからn*A"|E"^n

nは奇素数なので、n|E", rad(A")|E"


右辺の各項と左辺の各項を、n*A"で割ると、

(E"^n)/(n*A")=
{(E"^n)/n}/A"=

-(-B")^(n-1)-{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A"^(k-1)*(-B")^(n-k)}+
-Σ[k=2,n-1](nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A"^(m-1)*(-B")^(k-m)}*E"^(n-k)


もし、

{(E"^n)/n}/A" に A" の素因数が残っていれば、

rad(A")|E" で、
A" |{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A"^(k-1)*(-B")^(n-k)}だから、

(-B")^(n-1)も A" の素因数を持ちます。
B" と A" は互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E"^n)/n}/A" に A" の素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E"^n)/n}は、ちょうど A" で割り切れることになります。

 

A"は、(E"^n/n)をちょうど割り切るので、
A"の素因数pの冪は、p^m | E" かつ p^(m+1) ∤ E"のとき
 
p≠nで、p^mnの形をしています。

また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。

 

 


[3] E"=-E, A"- A=2*E, rad(A) | rad(E), rad(A") | rad(E), 

  A|(E^n)/n, A"|(E^n)/n から

 ⇒ rad(A) | rad(A"), n|E, A"=A+2*E,

  AとA"の素因数pの冪は、p^mnまたはp^(mn-1)の形で矛盾 のご説明


A"=A+2*E と rad(A) | rad(E)から
rad(A) | rad(A")

A≠1なので、Aのすべての素因数pは、A"の素因数pです。

(1) E≠0 のとき、

A,A"は、(E^n/n)をちょうど割り切るので、
A,A"それぞれの素因数pの冪は、p^m | E かつ p^(m+1)∤Eのとき

p≠nで、p^mnの形をしています。
また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。

つまり、
A=∏ [p≠n]p^mn・{∏ [p=nのとき]p^(mn-1)}

A"= A+2*Eより、A"-A =2*E

A"-A =2*Eについて、rad(A) | rad(A")より

左辺Aの素因数pは、左辺A"の素因数pでもあり、
ともに、左辺の素因数pの冪は、

p≠n のとき、p^mn の形を、

p=n のとき、p^(mn-1) の形をしています。


ところが、右辺の素因数pの冪は、

p≠n のとき、p^m、

p=2のとき、p^(m+1)です。

n≧3なので、
p≠n かつ p≠2 のとき、p^mn>p^m
p=n のとき、p^(mn-1)>p^m

p=2 のとき、p^mn>p^(m+1)

左辺のpの冪と右辺のpの冪が異なり矛盾します。


(2) E=0のときは、

(X+Y)^n = Z^nより

X^n + Y^n +{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)} = Z^n

X^n + Y^n = Z^nで、X,Yは自然数なので、 

{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)}=0となり、矛盾します。


なので、

 X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素な自然数、nは奇素数はありません。

 

※なお、n=4のときの証明は既知とします。