フェルマーの最終定理のよくある簡易的証明9X

フェルマーの最終定理のよくある簡易的証明のポイントをご紹介します。

 X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素、n≧3が素数として 矛盾を導きます。


 流れのポイントは、次の[1][2][3]です。

[1] E=X+Y-Z と  X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと

 ⇒ A+B=C, n|E,  n*A|E^n
 
[2] A'= X=A+E, B'= Y=B+E とおくと

 ⇒ Z= A'+B'-E, n|E,  n*A'|E^n

[3] A'=X=A+E, rad(A)⊆rad(E), rad(A')⊆rad(E), 

  A|(E^n)/n, A'|(E^n)/n から

 ⇒ rad(A)⊆rad(A'), n|E, A'=A+E,

  AとA'の素因数pの冪は、p^mnまたはp^(mn-1)の形で矛盾 

 次に、[1][2][3]の順にご説明します。


[1] E=X+Y-Z と  X=A+E, Y=B+E, Z=C+E とおくと

 ⇒ A+B=C, n|E,  n*A|E^n のご説明


E=X+Y-Zとして、 X=A+E、Y=B+E、Z=C+Eと置くと、 A+B=Cになります。

なぜなら、
E-Y=X-Z=-B
E-X=Y-Z=-A
E-Z=(X-Z)+(Y-Z)=-C
だから、A+B=Cになります。

AとBのどちらかは、1ではないので、A≠1とする

なぜなら、A=B=1とすると、X=Yになるから。

(A+E)^n + (B+E)^n = (C+E)^nなので、

A^n+Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*E^(n-k)+E^n+
B^n+Σ[k=1,n-1]nCk*B^k*E^(n-k)+E^n=
C^n+Σ[k=1,n-1]nCk*C^k*E^(n-k)+E^n

E^n=

{C^n-A^n-B^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{C^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


 C=A+Bを代入すると、

E^n=

{(A+B)^n-A^n-B^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{(A+B)^k-A^k-B^k}*E^(n-k)


E^n=

Σ[k=1,n-1]nCk*A^k*B^(n-k)+

Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*A^m*B^(k-m)}*E^(n-k)


右辺の各項は、nCk*Aを含み、n|nCkだからn*A|E^n

nは3以上の素数なので、n|E, rad(A)|E


右辺の各項と左辺の各項を、n*Aで割ると、

E^n/(n*A)=
{(E^n)/n}/A=

B^(n-1)+{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}+
Σ[k=2,n-1]B*(nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A^(m-1)*B^(k-m-1)}*E^(n-k)

もし、

{(E^n)/n}/AにAの素因数が残っていれば、

rad(A)|Eで、
A|{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A^(k-1)*B^(n-k)}だから、

B^(n-1)もAの素因数を持ちます。
AとBは互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E^n)/n}/AにAの素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E^n)/n}は、ちょうどAで割り切れることになります。



[2] A'= X=A+E, B'= Y=B+E とおくと

 ⇒ Z= A'+B'-E, n|E,  n*A'|E^n のご説明

Z = C+E =
A+B+E =
A+E + B+E -E =
A'+B'-E

から
Z= A'+B'-E 

X=A', Y=B', Z= A'+B'-E 
だから

A'^n + B'^n = (A'+B'-E)^nなので、
間違い
A^n + B^n =
(A'+B')^n + Σ[k=1,n-1]nCk*(A'+B')^k*+(-E)^(n-k) - E^n

E^n=

{(A'+B')^n-A'^n-B'^n}+

Σ[k=1,n-1]nCk*{(A'+B')^k-A'^k-B'^k}*(-E)^(n-k)


E^n=

Σ[k=1,n-1]nCk*A'^k*B'^(n-k)+

Σ[k=2,n-1]nCk*{Σ[m=1,k-1]nCm*A'^m*B'^(k-m)}*(-E)^(n-k)


右辺の各項は、nCk*A'を含み、n|nCkだからn*A'|E^n

nは3以上の素数なので、n|E, rad(A')|E


右辺の各項と左辺の各項を、n*A'で割ると、

E^n/(n*A')=
{(E^n)/n}/A'=

B'^(n-1)+{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A'^(k-1)*B'^(n-k)}+
Σ[k=2,n-1]B*(nCk/n)*{Σ[m=1,k-1]kCm*A'^(m-1)*B'^(k-m-1)}*(-E)^(n-k)

もし、

{(E^n)/n}/A'にA'の素因数が残っていれば、

rad(A')|Eで、
A'|{Σ[k=2,n-1](nCk/n)*A'^(k-1)*B'^(n-k)}だから、

B'^(n-1)もA'の素因数を持ちます。
A'とB'は互いに素だから、これは矛盾します。

なので、
{(E^n)/n}/A'にA'の素因数は残っていません。

いいかえれば、

{(E^n)/n}は、ちょうどA'で割り切れることになります。


[3] A'=X=A+E, rad(A)⊆rad(E), rad(A')⊆rad(E), 

  A|(E^n)/n, A'|(E^n)/n から

 ⇒ rad(A)⊆rad(A'), n|E, A'=A+E,

  AとA'の素因数pの冪は、p^mnまたはp^(mn-1)の形で矛盾 のご説明


A'=A+E と rad(A)⊆rad(E)から
rad(A)⊆rad(A')

A≠1なので、Aのすべての素因数pは、A'の素因数pです。

E≠0 のとき、

A,A'は、(E^n/n)をちょうど割り切るので、
A,A'それぞれの素因数pの冪は、p^m |E かつ p^(m+1) ¦ Eのとき

p≠nで、p^mnの形をしています。
また、もし素因数p=nがあれば、
p=nの冪はp^(mn-1)の形をしています。

つまり、
A=∏ [p≠n]p^mn・{∏ [p=nのとき]p^(mn-1)}=
(∏[p≠n] p^m)^n・{∏ [p=nのとき](p^m)^n・p^(-1)}=
∏(p^m)^n・{∏ [p=nのとき]p^(-1)}

A'= A+Eより、A'-A =E

A'-A =Eについて、rad(A)⊆rad(A')より

左辺Aの素因数pは、左辺A'の素因数pでもあり、
ともに、左辺の素因数pの冪はp^mnまたはp^(mn-1)の形をしています。

ところが、右辺の素因数pの冪は、p^mです。

n≧3なので、
p^mn>p^(mn-1)>p^m
だから、

左辺のpの冪と右辺のpの冪が異なり矛盾します。


また、E=0のときは、

(X+Y)^n = Z^nより

X^n + Y^n +{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)} = Z^n

X^n + Y^n = Z^nで、X,Yは自然数なので、 

{ΣnCk*(X^k)*Y^(n-k)}=0となり、矛盾します。


なので、 X^n + Y^n = Z^nで、 X,Y,Zが互いに素、n≧3の素数はありません。

※なお、n=4のときの証明は既知とします。